商用利用可能な画像生成AIサービス「Emi 3(デモ版)」を使いながら、AIイラストについて学ぶ

こんにちは、ハヤマです。
今回は、「AIイラスト」をテーマに書いていきたいと思います。

AIイラストとは

AIイラストとは、大量のデータを学習したAI(人工知能)が生成したイラストのことです。イラストのテーマやシチュエーションをテキスト(プロンプト)で表現して指示を与え、それを元にAIが新しい画像を生成します。

近年では生成AIで作成したイラストがPIXTAなどの画像素材サイトで販売されていたりしますね。企業広告でも、AIイラストを活用したものをちらほらと目にするようになりました。

以前にAIイラストを活用したことがあったのですが、その際にピックアップした素材のクオリティが自分が思っていたものよりも高くて驚きました。
その時探していたテイストはアニメタッチの人物イラストだったのですが、AIのイラストって、もっとこう「なんとも言えない違和感」があると思っていました。
例えば、指の数や関節がおかしかったり、細かなディテールの整合性がとれていなかったりなどから感じる"異物感"だったり。 もちろんそういったものは今でも見かけますが、それ以上にうまく生成されたイラストの方が多く、AIの学習スピードと技術は本当に凄まじいな...と思いました。

AIイラストと著作権について(2025年現在)

身近に感じるようになってきたAIイラストですが、そもそもAIイラストを作成した場合の著作権ってご存知でしょうか?

2025年現在では議論の最中といったところで、国によって考え方や法的解釈も異なり、現時点では完全なルールが定まっていないのだそう。

日本の著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。
“思想又は感情を創作的に表現”・・・つまりは人間が創作したものに対して認められるため、現在の日本の法的解釈ではAIが自動生成した画像には、基本的に著作権が認められていません。

ただし「AIが生成した画像に人間が創作的な表現を加えた」場合などの条件を満たせば、著作権が認められる場合もあるようです。

これだけAIの進歩がすごいと、人間とAIの“境界線”なんて明確に判別することはできるのかな…などと考えがよぎってしまいますが、今後細かくルールが制定されていくと思います。

生成AIサービスを使ってイラストを作成してみた

実際に、商用利用可能な生成AIサービスを使ってAIイラストを作成してみたいと思います。
生成AI自体はPhotoshopで何度もお世話になっているのですが、用途は写真の拡張や合成といったものが多いです。画像素材サイトにアップされているようなかわいらしいアニメ風イラストを生成した経験はありませんが、はたしてうまくいくのでしょうか。

※生成AIサービスを利用の際は、各サービスが提示している利用規約をきちんと読みましょう。規約を守らないと、著作権侵害となる可能性があります。特に商用利用の際は注意が必要です。

今回利用するのはこちら。

画像生成AIサービス「Emi」
note.com

こちらは有名な「AIいらすとや」を開発したAI Picasso株式会社が開発した、日本発の画像生成AIサービスです。

特徴は以下の通り。

  • イラスト、アニメ、マンガといった表現に特化した、独自開発の画像生成AIモデル
  • 最先端の基盤モデル「Stable Diffusion 3.5 Large」を使用。同意のない画像は学習しないという方針(オプトアウト)を採用し、約200単語の詳細なプロンプトにも対応
  • 商用利用を前提とした設計で、無償公開

また、こちらの紹介記事によると、画像の学習は以下のように行っているとのこと。

学習データは、Stable Diffusionと同様のデータセットからDanbooruの無断転載画像を取り除いて手動で集めた約3,000枚の画像と、Stable Diffusionと同様のデータセットからDanbooruの無断転載画像を取り除いて自動で集めた約40万枚の画像。無断転載画像からの追加学習は行われておらず、ダウンロードできるEmi 3のモデルは日本の著作権法に基づいて合法とされる。

商用利用の可否は基盤モデルの学習方法(オプトアウトを採用しているかどうか)によって定まるようですね。

※ただしモデルの学習上は問題なくても、サービスの規約によって権利も様々。例えば有料・無料の利用によって商用利用の可否が変わることもあるため、利用規約は必読です。

Emi 3はローカル版、ブラウザ上で利用できるデモ版での公開がされています。
本格的にやるならば、上記の公式ページからモデルデータをローカルにダウンロードし、環境構築をしてから利用するのが推奨とのこと(精度がかなり違うのだそう)。

今回はお試しで、デモ版を利用してみたいと思います。

Emi 3(デモ版) huggingface.co

ページにアクセスすると、シンプルな操作画面が表示されます。

プロンプトを入力して、実行をクリックすると画像が生成されるようです。

「漫画風の東京タワー」という内容で生成を試みます。

できました。
ざっくりとした指示から、AIの方で、なんとなく物語性のある構図に仕立ててくれました。

生成された画像のすぐ下にある英語のワードはおそらくこの画像を作るにあたってAIが指定したプロンプトだと思うのですが、とても長い。

Photoshopの生成塗りつぶし機能でもそうでしたが、AI画像を生成するコツって「いかにプロンプトを使いこなせるか」がキモなのだと改めて実感しました。
検索すると、プロンプトのテンプレートや利用モデルごの記述方法(タグベースや自然言語など)の紹介ページも見つけられるので、気になった方はぜひ。

さいごに

AIイラストは、時間やコストに制限がある広告業界では特に、表現や提案の幅を広げる術としても便利なツールであると感じました。
個人的には、プロンプトの記述についてもっと理解を深めていきたいです。

イラストレーターさんを応援したい自分としては、「AIがそれっぽく作ったイラスト(あえて棘のある言い方)」に対する危機感や不安感といった複雑な気持ちも抱えています。
だからこそ、現場の中で「AIとの上手な付き合い方」を模索していきたいなと。
記事を書くにあたって色々調べていく中で、「AI絵師」さんと呼ばれる方々の苦労や努力も垣間見えました。プロンプトの工夫や生成後のレタッチなど、理想の形に仕上げるまでが大変だと思います。
当たり前かもしれませんが、AIイラストのその向こうにも、クリエイターが存在しているのだと感じることができてよかったです。
AIを正しく取り扱う(クリエイターの権利を守る)ための著作権や利用に関する厳格なルールや棲み分け、何より利用する側の意識を高めることが重要だと思います。